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2015.3.6

コラム

JSAA OPEN SEMINAR vol.1『バスケットボールにおけるIT×データの今と未来』開催レポート[後編]

JSAAOPENSEMINAR
2015年2月26日(木)18時より日本大学三崎町キャンパスにて、JSAAオープンセミナーvol.1が開催された。生憎の雨の中、教室いっぱいに集まったのは総勢90名。バックグラウンドは多種多様ながら、今回テーマとなった「バスケットボールにおけるIT×データの今と未来」に興味関心を持った感度の高い参加者によって、教室は熱気に包まれていた。

今回は後編としてパネルディスカッション「バスケットボールにおけるIT×データの今と未来」の模様をレポートする。パネルディスカッションには情報提供から引き続き登壇した斎藤千尋氏(写真中央)、SAPジャパン・バイスプレジデント兼チーフイノベーションオフィサーの馬場渉氏(写真右)、女子日本代表チームテクニカルスタッフの尺野将太氏(写真左)の三氏をパネラーに迎え、日本スポーツアナリスト協会理事の千葉洋平がモデレーターとして議論を進行した。主に3つのトピックについて白熱の議論が交わされた。
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テーマ1:「日本が世界で勝つためにデータをどのように利用すべきか」

斎藤氏が情報提供の最後に語った「膨大なデータの山からいかに宝をみつけるか」という提言から議論はスタート。これに対し馬場氏は「練習で使えるデータでなければ意味がない。納得感のあるデータでなければ練習には落とし込めないのでは。」と指摘します。SAP社に縁の深いサッカードイツ代表チームの事例を交えつつ、「納得感のあるデータでの評価から、いかに課題を見つけ、いかにパフォーマンス向上に繋げるかがカギ」と論じ、データを平面で見るのではなく、ポジショニング、ボディコンタクトなどの文脈を考慮した上で立体的にベーシックスタッツの原因分析をすることが必要だという議論が展開されました。

SONY DSCそして議論はフロアにも展開。昨シーズンまでNBAサンアントニオ・スパーズにてアスレチックトレーナー(AT)を務めていた山口大輔氏に対して、スパーズでのデータ活用にも話が及びました。NBAの中でも常勝軍団として知られるスパーズでは、シーズンを通した選手の健康状態のマネジメントに常に気を配っているそうです。選手のプレー時間をマネジメントし、昨シーズンは1ゲームでの平均プレー時間が30分を超える選手は誰ひとりいませんでした。(参照:“3 Ways Popovich Beat the Heat” Qore Performance 10/28/2014)チームによっては主力選手がほぼ全ゲームフル出場というのも珍しくありません。スパーズのティム・ダンカンとオクラホマシティ・サンダーのケビン・デュラントではシーズンを通したプレー時間が1,000分違ったそうです。これを1試合30分として換算すれば33試合分となり、デュラントはそれだけ多くプレーしていたことになります。それではプレーオフに辿り着くまでに疲弊しきってしまう可能性が高いというわけです。ATとしても、そんな形でデータを使いながらコンディショニングに務めていたという事例を共有してくれました。
 

テーマ2:「日本におけるSportVU導入の可能性」

SONY DSCここでの議論はSportVUの投資にかかる費用からスタート。年間の運転資金は1アリーナ当りおよそ$100,000(約1,200万円)なのでNBA全30チームでおよそ$3M(約3億6,000万円)の投資をしていることになります。(参照:“NBA expands STATS LLC’s SportVU analytics technology to all 30 teams” Digital Trends 09/13/2013)これは安いでしょうか?高いでしょうか?斎藤氏はNBAにとっては3億以上の投資でも回収出来るだけのメリットはあると言います。実際、馬場氏のNewsPicksでの連載(「ログは金になる?NBAの取り組み」02/13/2015 NewsPicks)にもある通り、サイトへの新規アクセスは2倍に増え、平均滞留時間も2倍に増しているそうです。その結果、放映権料が3倍に膨れ上がっているのです。ここには昨年コミッショナーに就任したアダム・シルバー氏の「テクノロジー戦略」があると馬場氏は言います。ビジョンのコミットメントをすることで、メディアやファンの期待値も大きくなり、それだけのインパクトを与える可能性が高まるというわけです。
 

テーマ3:「SportVUが導入されたらどのように活用出来るか」

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それではこのSportVUを導入した場合、一体どのように活用出来るのでしょうか?尺野氏は現場での事例を示してくれました。国際大会など時間的な制約がある中でどうしてもプレーの集計に時間がかかってしまうという現状に触れ、SportVUのようなシステムがあれば時間がかかる手作業が減り、データの集計ではなく戦略を考えることに時間を費やすことが出来ると言及。リアルタイムでのデータ活用やゲーム毎の比較など、活用したい場面は無数にあると語っていました。

 

SONY DSCここで再び議論はフロアへ展開。WOWOWにてSportVUを活用した解説でNBAアナリストとして活躍している佐々木クリス氏は、これまで感覚ベースで語られていたひとつひとつのプレーもデータ(アドバンストスタッツ)を用いることで論理的に語ることが出来ると説明。選手が局面ごとに選ぶひとつひとつのプレーの裏側に隠された「文脈」もデータを使うことで、読み取ることが出来るのだそうです。また、データが公開されることで醸成されるライブ放送の価値拡大、そしてソーシャルメディアでの拡散によってファンの心をつかむことにも繋がると言います。

また、現場やメディア以外での活用の可能性として、馬場氏はリーグとしてアリーナに来ないファンへの情報提供とアリーナに訪れるファンへのエンゲージメントという2点の重要性を説きました。更に、莫大な放映権料を得ているNBAには難しいながら、まだ放映権にも余地がある日本のバスケットボール界にはSportVUなどを用いたライブプラットフォームもつくれるのでは?と未来への可能性を語ってくれました。

※馬場氏のコメントについてはNewsPicksにて詳しく取り上げていただきました。
“変革を感じさせてくれるところに人は集まる” NewsPicks 03/06/2015

 

まとめ

今回、SportVUを含めたNBAでのIT×データ活用の事例、日本代表でのデータ活用事例を基に、様々な角度からバスケットボールにおけるIT×データ活用の可能性を論じていただきました。実現に向けた障壁は多いですが、SportVUのようなシステムが導入されることを想定する登壇者たちの表情は活き活きしていました。タスクフォースによる新リーグ構想と共に、競技としての今後にも注目と期待が集まるバスケットボールの未来には明るい光があると感じられるセミナーとなりました。

*今後もJSAAでは様々な競技やテーマを取り上げ、オープンセミナーを実施して参ります。実施の際にはこちらのサイト及びTwitterアカウント、Facebookアカウントより告知して参りますので是非チェックして下さい!

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