テニス、サッカー、ラグビーなど、世界中のスポーツにテクノロジーを利用した様々なサービスを提供してきたソニー(株)のグループ会社ホークアイが2020年、ついに野球界に本格参入。メジャーリーグ全30球場に、画像解析技術を用いたプレー分析用のトラッキングシステムが導入され、日本でもヤクルトが12球団でいち早く導入を決めました。今後は、ボールの回転や選手の位置だけでなく、関節の動きやバットのスイング軌道など、これまで明らかにされていなかった情報が、網羅的にデジタル化される可能性が出てきました。
果たして、野球のデータ化はどこまで進むのでしょうか。テクノロジーの進化は選手のプレーやファンの楽しみ方をどう変えるのか。モデレーターにデータスタジアム株式会社の山田隼哉氏を迎え、ホーク・アイ・アジアパシフィック VP ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(株)CPBS スポーツ事業室 担当部長の山本太郎氏と、株式会社ヤクルト球団の藤沢剛氏に競技現場とソリューションを提供する立場、それぞれの視点から語り合っていただきました。
【好評につき、SAJ2021のアーカイブ視聴チケットの販売を2/28(日)まで延長しました】
ホークアイを使ってできることとは?
セッションは山本氏によるホークアイの紹介からスタートしました。ホークアイは「審判判定支援」「放送映像効果支援」「EPTS(パフォーマンストラッキング)」「コーチング」「ファンエンゲージメント」と様々な場面で活用されています。皆さんもテニスなどでボールがインだったのかアウトだったのか判定する映像を見たことがあるのではないでしょうか。
野球においては、主に「EPTS」を用いてサービスを展開しています。ホークアイ以外にも多くのトラッキングツールが存在する中、MLBでホークアイが評価された理由のひとつが「データの正確性」です。スタジアム内に複数台のカメラを設置することで、あらゆるデータをトラッキングすることができます。
日本でいち早く導入を決めたヤクルトの狙い
2018年にトラックマンを導入したヤクルトでしたが、他の球団よりも後発だったため、次のテクノロジーはすぐにできるよう準備をしていたそうです。先にメジャー球団を回って情報収集し、ホークアイを導入することでどんなことが可能となるのか予測していました。
藤沢氏はホークアイを導入してからの1年を振り返り、「取得したデータの精度が衝撃だった。本当はこうだったんだという”発見”があった」とコメントしました。加えて、当時はデータが取得できなかったとしても、映像があれば後から取得が可能な点もメリットとして挙げました。
ホークアイのさらなる可能性
2021年シーズンに向け、神宮球場に設置するカメラをさらに増やすことで、新たに取得できるデータもあります。藤沢氏は守備の領域と、バットの軌道のデータに注目しているそうです。稀代の打者である青木宣親選手の分析について、「プレッシャーでもあり、楽しみである」と語りました。
野球のデータ化はどこまで進むのか
話題は「野球のデータ化はどこまで進むのか」について。山本氏は今後の可能性について「夢がある」と語れば、藤沢氏はデータ化が進むことで「本当はこうだったんだ、ということが分かると思う。子供たちの興味喚起やけがの予防など、(データは)議論していくために必要なものになっていく」と見解を語りました。
その後、セッションはデータをエンタメや教育の分野で活用することなど、データ活用の様々な可能性について議論して終了しました。ホークアイを活用するヤクルトが新シーズンどうな活躍を見せるのか。メディアがデータをどう活用していくのか。今後のイノベーションにますます期待を抱かせるセッションとなりました。
JSAAではSAJ2021のアーカイブ映像を2/28まで公開しています。