新型コロナウイルス感染症の感染拡大は多くの産業に打撃を与えました。Jリーグもリーグの中断、無観客試合、入場者数制限などを余儀なくされ、2020シーズンは苦難の連続でした。村井満チェアマンの号令の下、いち早く対策を進め、「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」を策定し、2020年7月10日から有観客試合を再開しましたが、スタジアム観戦者数は大きく減少しました。
そのような中、Jリーグではファン・サポーターの声を収集し、分析を行ってきました。このセッションでは、分析から見えてきたスポーツ観戦の顧客動向について共有しつつ、スポーツ観戦の体験価値(CX)についてJリーグ・クラブのマーケティングを担っているJリーグ コミュニケーション・マーケティング本部 本部長の笹田賢吾氏、横浜マリノス株式会社マーケティング本部FRM事業部 部長の永井紘氏、を招いて考察していただきました。モデレーターはSAJ2021実行委員でもあり、Jリーグのマーケティング部でマーケティング担当オフィサーを務める濱本秋紀氏にご担当いただきました。
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コロナ禍で行った観戦者/非観戦者の調査
冒頭、濱本氏がJリーグが行った調査の概要を紹介。Jリーグではご来場いただいたファン・サポーターの皆さまにアンケートを実施し、安心・安全な観戦体験を提供できているかのモニタリングを行ったそうです。また、2019年に来場経験があるものの、2020年に来場されていない方にも非観戦理由の特定などを目的に調査を行ったといいます。
2019年シーズンと比べて、2020年シーズンの来場者は約6~7割にとどまり、再来場率も約20ポイント下がる結果に。中でも、JリーグでF2層と定義している来場回数が1、2回の比較的ライトなユーザーが最も再来場率が低くなりました。
20年シーズンの非来場者に21年シーズンの来場意向を聞くと、-56ポイントとこちらも低い結果に。21年シーズンも新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、スタジアムで観戦したいと考える人は少なくなっているようです。一方で、Jリーグへの興味・関心が薄れたわけではないことも調査によって分かったそうです。
調査結果を受け、笹田氏は「Jリーグへの興味・監視が薄れていないのはありがたいこと。昨シーズン、Jリーグでクラスターは発生していない。安全性の発信などはもっとやっていかなければならない」とコメントしました。
コロナ禍で行った横浜FMのマーケティング活動
続いて、永井氏がコロナ禍での取り組みを紹介しました。無観客、上限5000人、上限スタジアムの50%と、来場いただける観客の上限が変わる中でも、意識したことは「ファンエンゲージメント」。財政的にも厳しい状況の中、すぐにマネタイズを意識するのではなく、ファンとのコミュニケーションやつながりを重視したそうです。
コロナ禍でも見えた可能性
次の話題は、「コロナ禍でも見えた可能性」。リモート応援などの「観戦様式の変化」、クラウドファンディングや投げ銭など、「応援消費」が台頭したことについて、リーグとクラブそれぞれの立場で議論が展開されました。
さらに「ファンエンゲージメント(絆)の在り方」というテーマでも討論が行われました。笹田氏は「ファンとの接点をもっと増やしていかないといけない。今までは試合中心のコミュニケーション。もちろん試合は大事なコンテンツだが、それ以外のコンテンツも増やす必要がある。クラブ単体では難しいので、リーグが横断してサポートできたら」と語りました。そして「Jリーグからもネットを起点としたヒーローを生み出していきたい」と今後の戦略を語りました。
カギはリーグ・クラブの“メディア化”?
最後に笹田氏、永井氏が今後の展望を語りました。笹田氏は「今年は昨年の(コロナ禍の)経験がリーグ・クラブともにある。今年も耐える必要はあるが、SNSのプレゼンス強化などを鍛えることで、リーグ全体の力が上がっていくと思うので推進していきたい」と意気込みを語り、永井氏は「コロナウイルスの影響はどうしようもないので、しっかりとファンベースを作り、ファンエンゲージメントを高めていくことがすべて。今後はコンテンツホルダー側の強みを生かしていくべき。(クラブを)メディア化し、試合以外のコンテンツをどう作っていくか。試合のない日にどうマリノスに触れてもらうかに注力していきたい」と語って講演を締めくくりました。
新シーズンは試合日以外にどんな動きがあるのか。期待の高まるセッションとなりました。
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