日本スポーツアナリスト協会(JSAA)は5月20日(土)にCIC Tokyoにて「スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2023」を開催。オープニングセッションには、サッカー日本代表監督の森保一氏に登壇いただきます。
ワールドカップ・カタール大会で日本代表をベスト16に導いた森保氏はスポーツアナリティクスをどう活用しているのでしょうか。JSAAでは、SAJ2023を前にその一端を紹介すべく、岡山理科大学 経営学部 経営学科の准教授を務める久永啓氏に話をうかがいました。久永氏は森保氏がサンフレッチェ広島の監督としてJリーグを連覇した2012・13シーズン、クラブの分析担当を務めていました。SAJ2023では、森保氏のセッションに登壇いただきます。久永氏が語る当時のエピソードや、SAJ2023でどんなことを聞きたいと考えているかを知っておくと、当日のイベントがより一層楽しめるかもしれません。
森保監督からのリクエストは「かなり細かい」
―サンフレッチェ広島で分析担当をされていた当時の役割を教えてください。
私の役割は対戦相手の分析です。毎週土曜日に試合がある場合、チームが試合をしている土曜は次の対戦相手の試合を見に行っていました。コーチの仕事もしていたので、翌日は試合に出ていないメンバーの練習試合の撮影や分析結果のまとめをします。その後、試合に向けて火曜午前の練習後に私が分析した資料をコーチングスタッフに共有し、午後の練習後と水曜で対策を仕上げます。その後、木曜の練習前に選手向けのミーティングを行っていました。金・土は対戦相手の選手がけがをしたり変更になる可能性があるので直前まで情報をアップデートしつつ、また次の対戦相手の分析準備をするという仕事でした。分析以外にもピッチに立って練習のサポートも行っていました。
―当時、森保監督が重視されていたデータや映像はありますか?
データはほとんど見ていませんでした。それは当時公開されているデータが少なく、クラブ独自でデータを集めることが難しかった影響もあると思います。大事にしていたのは自分たちのスタイルに対して相手がどうハマるかという部分ですね。
リクエストがあるときはかなり細かいです。例えば、あるチームのブラジル人選手がパスを出す前に片足でリズムを取るシーンとか笑。中盤から決定的なパスを出すタイプの選手だったので、そのパスを出す前にステップを踏むというか、普段と違うリズムでプレーするシーンを選手たちに見せたかったみたいです。
他にはあるチームのセンターバックについて、ビルドアップの際のパスが少しズレているからそれを見せたいと言われたことがありました。実際にそのシーンを佐藤寿人選手がついてゴールを奪ったんです。試合後、「分析どおりだった」とコメントしてくれましたが、私の分析だったのではなく森保さんの分析でした笑。現役時代からそうやって細かなことも考えながらプレーしていたんだろうなと思いました。
w杯のドイツ戦、森保監督には「何が見えていたのか聞きたい」
―日本代表監督になってからの森保さんについて、変化を感じますか。
森保さんは自分に何ができるか、得意なこと・不得意なことが分かっている人ですし、自身の置かれている立場を良く分かっているんだと思います。広島時代からそうでしたが、代表監督になってから選手へのリスペクトをすごく感じますし、自分自身を誇示するようなことは決してしません。現在の立場で、目標を達成するために考えているんだと思います。
―SAJ2023ではどんな話を聞きたいですか。
「ワールドカップ・カタール大会、特に日本vs.ドイツは森保さんにはどう見えていたんですか?」っていう話ですね。一般的な戦術論やデータの話で考えると、日本代表の戦い方は説明が難しいんです。おそらく我々には見えていないものが森保さんには見えているはずなんですよ。ドイツにあれだけ押し込まれていましたし、私は完全に崩されていると思いました。でも選手たちは0-1でも大丈夫だと考えていた。それは森保さんやコーチングスタッフもそう捉えていたからだと思います。
事前の分析結果をもとに、一般的なサッカーが詳しい人やアナリストが分析しても見えなかったものが、森保さんや選手たちには見えていたと思うので、それが何だったのかめちゃくちゃ知りたいです。
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当日、森保氏からどんな回答が得られるのか。注目ですね。SAJ2023は5月20日(土)にCIC Tokyoで開催。オンラインでの参加も可能で、イベント終了後1ヶ月間有効なアーカイブ動画へのアクセス権を付与致します。チケット購入はこちらから