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2017.4.24

イベント

JSAA Lounge vol.4 アナリストが作るモチベーションビデオの作成背景と過程

2017年4月4日、神保町Editoryにて、JSAA Lounge vol.4が開催されました。今回のLoungeのテーマは、「モチベーションビデオ」です。

2016-17シーズンから、マンチェスター・シティの監督を務めているジョセップ・グアルディオラ監督は、FCバルセロナの監督を務めていた2008-09年シーズンのUEFAチャンピオンズリーグの決勝戦の直前、選手たちにある映像を見せたそうです。

グアルディオラが見せたのは、相手選手の分析映像ではありませんでした。映像には、Coldplayの「Viva la Vida」にのせ、映画「グラディエーター」の登場人物のように勇猛果敢に戦う、FCバルセロナの選手が映しだされました。この映像を観たFCバルセロナの選手たちは、試合に対するモチベーションがよりいっそう高まったと言われています。

グアルディオラが選手に見せた映像は、「モチベーションビデオ」と言われています。モチベーションビデオとは、選手の試合へのモチベーションを高め、チームの一体感を醸成することを目的とした映像です。近年、モチベーションビデオを試合前に選手に見せているチームが増えていますが、こうしたモチベーションビデオの製作は、映像分析を行うスポーツアナリストが担当する事が多いそうです。

そこで、JSAA Lounge vol.4では、国立スポーツ科学センター スポーツ科学部専門職であり、日本テニス協会ナショナルチーム強化スタッフを務める永尾雄一氏と、ラグビー・トップリーグのサントリーサンゴリアスのアナリストを務める須藤惇氏の二人に、実際に製作し、選手に見せたモチベーションビデオを特別に披露して頂きました。

モチベーションビデオでチームとして戦う意識を高める

永尾氏
永尾雄一氏

まず、永尾氏に実際にテニス男子日本代表向けに作ったモチベーションビデオを披露して頂きました。

永尾氏の専門はスポーツ心理学です。永尾氏は、自らモチベーションビデオを製作するだけでなく、博士号の修士論文のテーマにもモチベーションビデオを取り上げ、長年にわたってモチベーションビデオに関する研究を続けています。

永尾氏が、モチベーションビデオを作るにあたって大切にしていることは、「何のためのモチベーションビデオなのか、スタッフとディスカッションすることだ」と語りました。永尾氏は、モチベーションビデオを製作する前に、対戦相手、試合環境、など、試合に関連する情報を整理し、スタッフとディスカッションした上で、試合のテーマを明確にします。明確にしたテーマに基づいて、モチベーションビデオを製作するように心がけているそうです。

例えば、2016年3月に行われたデビスカップの対イギリス戦(ワールドグループ1回戦(アウェー開催))の時は、アンディー・マレーがいるイギリスとのアウェーでの対戦ということもあり、厳しい戦いになる事が予想されました。永尾氏とスタッフ、そんな厳しい戦いに向かうにあたって、試合のテーマをディスカッションしました。そこで導き出されたテーマは「可能性」です。勝つ可能性、戦う可能性といった、厳しい試合だからこそ、困難に打ち勝つ可能性を追求するという試合のテーマを伝えるモチベーションビデオが製作されました。

モチベーションビデオは、試合の2週間前くらいからディスカッションを始め、製作します。Loungeに同席していたテニス協会のスタッフによると、テニス選手は、元々選手個人でツアーを転戦しているので、チームで戦うという考え方を浸透させるのは苦労しているそうですが、モチベーションビデオを活用することで、選手のチームとして戦うという意識が高まってきたと、モチベーションビデオの成果を語りました。

監督・コーチの意向を尊重して作る

須藤淳氏
須藤淳氏

永尾氏に続いて、サントリーサンゴリアスの須藤氏が、自信が製作したモチベーションビデオを披露してくれました。須藤氏によると、サントリーサンゴリアスでは、試合当日に先発メンバーにジャージを渡し、先発メンバーに選ばれた選手がスピーチをした後、モチベーションビデオを観るそうです。映像は、1分30秒〜1分45秒と長さが決まっており、一度使った映像は選手が慣れてしまわないように二度と使わないそうです。

須藤氏が製作したモチベーションビデオの映像素材には、専属カメラマンの写真や試合の映像だけでなく、練習中にドローンで撮影した映像や、格闘技の試合映像も使用されていました。須藤氏は、普段から映像、写真、音楽といった素材を集め、監督・コーチの意向を尊重しながら、構成を考えて作っているそうです。例えば、日本選手権の決勝では、モチベーションビデオの冒頭に、メンバーから外れた選手からのメッセージを流した後、普段のモチベーションビデオを流して、よりモチベーションが高まるように工夫した、と語りました。

チームで映像を一番観ているのはアナリスト

須藤氏のセッション終了後、集まったアナリストや関係者との意見交換の場が設けられました。意見交換の場では、当日来場していた女子バスケットボール日本代表テクニカルスタッフの福田有紀子氏が製作した、U-18女子バスケットボール日本代表のモチベーションビデオが披露されました。永尾氏、須藤氏が作った映像とも異なる構成で、多くの関係者の関心を集めていました。

モチベーションビデオをスポーツアナリストが作る意味として、日本スポーツアナリスト協会の理事を務める千葉洋平氏は、「映像を一番観ている役職なので、一番作りやすい」と語りました。

チームのモチベーションを高める「モチベーションビデオ」の製作は、チームのパフォーマンスを分析してフィードバックする以外のスポーツアナリストの仕事として、ますます重要になってくると感じると共に、他の競技のモチベーションビデオもぜひ観てみたい。そんな声が聞かれた、JSAA Lounge vol.4でした。

(レポート:西原雄一)