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2018.2.16

GAME CHANGERS

「GAME CHANGERS」 スプライザ編Vol.1  アマチュアスポーツに足りないIT活用 スマホで簡単に「ワクワクしたい」を叶える

スプライザの代表取締役・土井寛之氏

JSAAの新連載企画『GAME CHANGERS』がスタートします。この企画では「スポーツアナリティクスジャパン2017」のメインテーマにもなった、日本における現存のスポーツ産業の仕組みを抜本的に変革する人や起業、サービスをゲームチェンジャーとして紹介していきます。

第一回は株式会社スプライザの代表取締役・土井寛之氏に話を聞きました。「アマチュアスポーツマンの『もっと上手くなりたい』を叶える」という哲学を掲げるスプライザがどんなサービスを展開しているのか、実際にスポーツの現場でどのように活用されているのかなどを語っていただきました。

起業のきっかけは「ワクワクしたい」という思い

「Clipstro」で撮影した残像動画。残像の間隔や表示数も変更できる
「Clipstro」で撮影した残像動画。残像の間隔や表示数も変更できる

 

―まずはスプライザのサービスを教えてください。

現在はスポーツの残像動画を撮影できる「Clipstro」と、ゴルフのスイングや弾道の軌跡を可視化できる「Clipstro Golf」。動画の共有や分析を通してコミュニケーションを促すツールの「SPLYZA Teams」という3つのスマートフォンアプリを展開しています。あとは中部大学と協力してハイライトシーンを簡単に作れる「HaiLyts」というアプリを作りました。

 

―これまでどういったキャリアを歩み、どういった経緯で起業したのでしょうか?

僕は元々製造業のソフトウェアエンジニアでした。就職して3年目ぐらいにウィンドサーフィンに出会い、そこからどっぷりハマッて頭の中がウィンドサーフィンでいっぱいになりました。すると相対的に平日の仕事がつまらなくなってしまったので、会社を辞めてオーストラリアに行ったんです。人生が1週間の連続だとすると、今は7分の2(ウィンドサーフィンができる土日)のみがワクワクしている状態。それならば、毎日ウィンドサーフィンだけができる環境に身を置いて、7分の7ワクワクする日々を体験してみようと思いました。

ところが、オーストラリアに行ってもそれが体感できなかったんです。ウィンドサーフィンの聖地と言われるような場所なのですが、そこには友達がいない。「1人で上手くなってどうするの?」みたいな感覚になりました。それで気付きましたね。僕はウィンドサーフィンが好きだけれど、仲間がいて、いつも一緒に練習して映像を撮り合い、終わったら一緒に映像を観る。それを観てご飯を食べながら議論する。これら全部をひっくるめて楽しかったんだなと。

当時僕はアマチュアで日本一になるという目標があって、仲間も同じような目標を持っていました。個人種目であっても皆が同じ目標を持ち、共有してそこに向かっていたという“プロセスすべて”が好きでした。そこに気付いたのが大きかったですね。

 

―そこからどう現在のサービスに辿り着くのか教えてください。

自分がワクワクしていたことが「仲間と目標を共有していくプロセス」だと気付いたとき、この言葉の中に「ウィンドサーフィン」も「スポーツ」も入っていないじゃないかと思ったんです。だったら何か目標を決め、仲間を集めてビジネスができればウィンドサーフィン以外でもワクワクする面白いことができるのではないかと思ったのが起業のきっかけになりました。

そこから起業に向けては100個ぐらいアイデアを出したのですが、採用されたのは私が最後に出した案でした。オーストラリアに行っていたとき、私は日本の仲間とつながるために映像を撮影し、技のやり方や近況などをブログに書いていました。それがすごく大変で、これで伝わるかなみたいな感じだったんです(笑)。そうした自分の課題を元に、プロスポーツではなく、アマチュアスポーツの領域にITが全然使われていない状況を改善しようと。そこから現在も掲げている「アマチュアスポーツマンの『もっと上手くなりたい」を叶える」というスローガンが起業前に決まり、今にいたります。

 

―土井さんがご自身で感じた課題がもとになっているので、御社のサービスで目指しているものが明確ですね。

私自身が毎日ワクワクしたいと思っているので、ビジネスではお客さんもワクワクするようなことをしないといけないなと。では、スポーツで一番ワクワクする瞬間といったら「上手くなる瞬間」だと思いました。勝つときももちろんそうですし、できなかったことができるようになると「よっしゃ」と雄たけびを挙げたくなるような感覚になる。それを僕らのサービスでやりたいなと。

私がブログでやっていた当時は「写真とテキスト」でしたけれど、創業した2011年ぐらいには「動画とスマホ」があるのでもっと利便性が上がると思いました。そこが始まりで、色々な話を聞いていったら「個人」よりも「チーム」のIT活用に課題があるという話をよく聞くので、今はスポーツチームにフォーカスしてやっているというのが創業からの流れです。商品を説明して、「ワクワクしますね」と言ってもらえたときが一番うれしいです。

「Clipstro Golf」はゴルフのスイングや弾道の軌跡を可視化する
「Clipstro Golf」はゴルフのスイングや弾道の軌跡を可視化する

―具体的に現在のスポーツ界との関わりを教えてください。どのような人たちに御社のサービスは使われているのでしょうか。

大学や高校が多いですね。プロはいろいろなサービスが充実していますから。でも、最近はプロチームのユースや育成年代からは問い合わせがあります。同じチーム内でも“IT格差”があり、育成年代ではトップチームと同じものは導入できない。現在はアナログになっていますが、成長の過程を可視化できていないと現場の人たちの定性的な判断だけになってしまいます。選手がどう成長したのか記録しておくことは非常に重要なことですからね。

 

―御社のサービスはどんな人に使ってほしいと思っていますか?

「分析はコーチがやるもの」という固定概念があると思います。でも、そのスポーツのことが分かっていればできるはずなので、選手自身にも分析をやってほしいです。作業を分担してやれば選手たちのためにもなるし、「認識のすり合わせ」ができるようになります。

 

―御社の強みとなる部分はどこですか?

まずはスマホだけで簡単にできるという点があります。他のツールは大体、パソコンの大きな画面を前提として作られていますから。あとは、会社には現在8人在籍していて、うち6人がエンジニアです。残りの(営業をしている)私も元エンジニアですし、経理の女性も元エンジニアです。すべてを内製でできるので、現場の声を聞いてアプリケーションを改善できます。

競合の製品は基本的に海外のものが多く、実は日本のやり方に少し合っていない部分があったとしても、アプリケーションを日本のためだけに変えることはできません。われわれは日本のカルチャーに合わせることができます。平日はメインの仕事があり、土日にしかスポーツができなくて時間がないという現状に即したからこそ今のアプリを作ることができました。現場の課題、ニーズに合わせて自分たちで商品を作っていけるということが強みだと思います。

もうひとつ特徴的なのはエンジニアがほとんど外国人なので、多言語に対応できます。

スポーツアナリストは「スポーツの価値を理解している人」

動画の共有や分析を通してコミュニケーションを促す「SPLYZA Teams」
動画の共有や分析を通してコミュニケーションを促す「SPLYZA Teams」

―「スポーツアナリスト」と接する中で、土井さんはどんな印象を持ちましたか?

スポーツアナリストはスポーツの価値を分かっている人たちですね。スポーツをやると子供たちは「答えのない問題を考えて改善していく力」を身につけることができます。これは社会に出たときにすごく重要な「人間力」や「仕事力」になってくる。

アナリストの方々はそういったスポーツの価値を分かっていて、しかもそれをさまざまな現場で実践できている人たちだと思います。

 

―御社が「スポーツアナリスト」を活かすとすればどんな活躍を期待しますか?

僕らは全員がエンジニアであるということが強みであり、弱みにもなっています。つまり「売りベタ」なんです。営業やマーケティングが極端に弱い。私もバックグラウンドが営業ではないので日々、試行錯誤しながら泥臭いことをやっています。

これを単純に営業的なバックグラウンドを持っている人に任せても違うと思っていて、ひょっとしたら、そこに当てはまるのが「スポーツアナリスト」なのかなと思います。私たちのアプリの価値を分かってくれる。今後アプリを改善するときに企画を出せる。それを人に伝えることもできる。アプリだけではなく、そもそも分析していくことの価値やスポーツをすることの価値を日々考えている人たちですからね。

 

―スポーツアナリティクスの今後はどう変わっていくと思いますか?

私は「スポーツアナリティクス」がスポーツの価値を上げるきっかけになると思っています。スポーツをやっている子供たちは受験科目だけをやっている子供たちよりも「協調力」であったり、「課題を発見する力」、そこから「解決案を考える力」などを持っていると思います。例えば部活で3 年間やってきた結果として、こういう力が身についたということが分かり、可視化できるようになると、「スポーツの価値」を高めることができる。それが分かれば「みんなスポーツやったほうがいいじゃん」ということになりますよね。

スポーツでプロになれなかった人たちは、進学や就職というセカンドキャリアで「スポーツをやってきました」としか言えません。しかも相手が価値を分かっていないと「へー」としかならない。だから問題が起きるんです。でも実際にはスポーツには素晴らしい価値がある。そこをもっと伝えていきたいと思います。

 

―JSAAに期待することがあれば教えてください。

スポーツの価値が分かっている人たちだと思っているので、スポーツの価値を上げることですね。あと「分析」という言葉は硬い印象があるので、もう少しライトにしてほしいです(笑)。

 

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)

次回は日本スポーツアナリスト協会代表理事の渡辺啓太と、株式会社スプライザの代表取締役・土井寛之氏との対談を掲載します。

「SPLYZA teams」の活用事例として、近江高校の取り組みがスポーツナビで掲載されています。詳細はこちらから。