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2018.11.5

イベント

『JSAA Analytics Challenge Cup』2日目開催レポート

2018年11月4日(日)に日産スタジアムにて、『JSAA Analytics Challenge Cup(通称:アナチャレ)』の本選2日目を行いました。

前日のフィールドワーク同様、42チームの中からエントリー審査を突破した10チームがJリーグ 横浜F・マリノスの集客施策をプレゼンテーションしました。

各チーム“色”の異なるハイレベルなプレゼン

各チーム横浜F・マリノスからご提供いただいた顧客データをSAPジャパン社提供のSAP Analytics Cloudなどを用いて分析。集客の課題を考えます。さらに前日のフィールドワークで行ったサポーターへのアンケート結果を加味し、スタジアムの集客数を上げるためには何が必要なのか。具体的な施策を提案しました。

若者をターゲットにファン同士が繋がるマッチングアプリの提案や、SNSを駆使したサポーターとクラブの共創施策など、提供されたデータやオープンソースからの情報も駆使し、それぞれの“色”が出た面白いプレゼンが続きました。

本戦に出場した10チーム

  • 上智大学 TKチーム:金子和樹(上智大学)、田中登馬(早稲田大学)
  • 同志社大学庄子ゼミチーム:松村明樹(同志社大学)、宮本航哉(同志社大学)、庄子博人(同志社大学)
  • 熊本大学院・筑波大学・仙台大学 KTSチーム:山室 冴(熊本大学院)、スコットアトム(筑波大学)、 山崎雄太(仙台大学)
  • 筑波大学 真っ白チーム:岡本大河(筑波大学)、渡邉達也(筑波大学)
  • 立命館大学bulldogチーム:原 千優(立命館大学)、長谷川美南(立命館大学)、種子田穣(立命館大学)
  • 大阪府立大学渡邊ゼミチーム:筒井雅之(大阪府立大学大学院)、近藤弘記(大阪府立大学大学院)、渡邊真治(大阪府立大学)
  • 東京大学大学院KTSチーム 鈴木雄登(東京大学大学院)、加藤辰弥(東京大学大学院)、高塚流星(東京大学大学院)
  • 慶應・東洋大学 関口・掛田チーム:関口海斗(慶應義塾大学)、掛田涼輔(東洋大学)
  • 上智大学院 横川チーム:松崎隼太 (上智大学大学院)、川島一浩(上智大学)、佐伯健太郎(上智大学大学院)
  • 関東学院大学「チャリティースクラッパーズ」:黒田 侑(関東学院大学)、小松虎二郎(芝浦工業大学)

各チームのレベルの高い提案に、審査員の皆さんは時にやさしく質問し、時に鋭い質問を交えながら聞き入っていました。

審査員

  • 岩渕 聖 (SAPジャパン株式会社 Leonardo&Analytics事業本部部長 兼 スポーツ・イノベーション推進)
  • 忰田 康征(スポーツ庁 参事官(民間スポーツ担当)付 参事官補佐)
  • 酒折 文武(日本統計学会 スポーツ統計分科会 / 中央大学 理工学部 准教授)
  • 出井 宏明(株式会社Jリーグデジタル 代表取締役社長)
  • 永井 紘 (横浜マリノス株式会社 FRM事業部 担当部長)
  • 舟橋 弘晃(早稲田大学スポーツ科学学術院 講師 / 早稲田大学スポーツビジネス研究所 研究所員(幹事))
  • 渡辺 啓太(一般社団法人日本スポーツアナリスト協会 代表理事)

「SAP賞」「優秀賞」「最優秀賞」を発表

10組のプレゼン後、審査員は別室に移動して審査。「SAP賞」「優秀賞」「最優秀賞」を発表しました。受賞者の喜びの声と共にご紹介します。

SAP賞:慶應・東洋大学 関口・掛田チーム:関口海斗さん(慶應義塾大学)、掛田涼輔さん(東洋大学)

左はプレゼンターの岩渕聖さん、右は2人を支えたSAPのメンターさん

「私たちはプレーヤーとしてずっとサッカーを続けてきましたが、サッカーをビジネス的に考えるのは初めてだったのでとてもいい経験になりました。データ分析は予想以上に難しかったです。まだまだ課題もあったと思いますが、データの活用法をもっと勉強しなければならないことを学んだので、今回をきっかけにさらに勉強して今後に活かしていければと思います。

(自分たちの提案でよかったと思う点は)事前に持っていた仮説をフィールドワークの結果で覆されたのですが、そこも踏まえて最後の施策を提案できたことがよかった点だと思います。

(他のチームの提案は)データの分析がしっかりとできていて、リスペクトしかありません。すごく勉強になりましたし、自分たちもまた知識を増やして、こういった機会があればトライしたいです」

優秀賞:熊本大学院・筑波大学・仙台大学 KTSチーム:山室冴さん(熊本大学院)、スコットアトムさん(筑波大学)、 山崎雄太さん(仙台大学)

左はプレゼンターの出井宏明さん、右は3人を支えたSAPのメンターさん

「(受賞の要因は)みんな最後まで寝ずに頑張ったことだと思います(笑)。

私たちはTwitterで連絡してチームを組んだので、会ったのは昨日(のフィールドワーク前)が初めてでした。それまでに自分たちでそれぞれ仮説を考えて、個人で考えてきたものを当日は本気でぶつけ合ってひとつの施策にまとめていきました。それがいろいろな面から課題を考えることにつながり、提案に様々な要素が盛り込まれていたことが良かったのだと思います」

最優秀賞:上智大学 TKチーム:金子和樹さん(上智大学)、田中登馬さん(早稲田大学)

左はプレゼンターの渡辺啓太JSAA代表理事、右は2人を支えたSAPのメンターさん

「私たちのストーリーやデータには自信を持っていましたが、どのチームもレベルが高かったので受賞できるとは思っていませんでした。

私たちの提案は『現状把握・戦略・予測』という3つのストーリーを立てて臨みました。ただ現状を抽象的に把握するのではなく、具体的に施策を打ち、そこからどんなことが予測できるのかというところまで提案できたことが優勝の要因だと思います。AIのベンチャー企業でアパレルのデータを分析しているので、カスタマージャーニーであったり、お客さんがどうやって購入したのかをデータとしてみているので、今回の提案の流れは作りやすかったと思います。

(フィールドワークは)最初に断られることもあってすごく厳しかったのですが、サポーターの生の声を聞くことができましたし、結果的に良いデータを得られたので良い経験になりました。次回も機会があれば、もっともっとレベルの高い、違う視点を持って挑戦していきたいと思っています」

審査員の声もご紹介

続いて、プレゼン後の審査員の声も一部ご紹介させていただきます。

岩渕聖さん(SAPジャパン株式会社 Leonardo&Analytics事業本部部長 兼 スポーツ・イノベーション推進)

「(学生に期待していたことは)ビジネスの現場では同じ人たちが同じことを議論しながら、優先順位の高いものからやっている状況だと思います。そこに対してデジタルネイティブな世代がどう考えているのか。いきなり面白いアイディアが出てくるかもしれないというのがまず期待したところです。プレゼンがうまいかどうかというよりは、皆さん光るものがそれぞれあって、それを後からつなげても面白いでしょうし、可能性を広げてあげるのがわれわれ大人の仕事だと思います。

(提供したSAP Analytics Cloudは)少しデータは触れるけれど、エクセルでは物足りなくなった人向けのツールです。取得できる情報量が増えていく中で、グラフを書けば問題が発見できる時代は終わってしまいました。それをアシストして問題を発見するお手伝いをするツールというようなイメージです。統計解析の専門家というより、経営者の横で新しいアイディアを出さなければならない人向けですね。

今日の発表の中では東京大学大学院KTSチーム(鈴木雄登さん、加藤辰弥さん、高塚流星さん)などは適切に使いこなせていたと思います。ビジネスパーソンでもこれだけ短期間で使えるようになることはあまりないと思います。

(学生に向けた今後のアドバイス)論文発表などは学校内でもあると思いますが、今回は立場のある“大人向け”にプレゼンする機会でした。ここでもらったコメントやフィードバックから自分に足りない点に気付いてもらうことが今回のポイントだと思います」

永井紘さん(横浜マリノス株式会社 FRM事業部 担当部長)

「過去4回参加させていただいていますが、年々レベルが上がっている印象です。どのグループも少なくとも1つ以上はわれわれの気付かない視点であったり、新しい視点をもらえたのですごく有意義な機会になりました。

(最優秀賞を獲得した上智大学TKチームはユニフォームという切り口での提案だったが)お渡ししたデータからグッズ購入の有無に着目した点が面白いと思いました。さらにフィールドワークも連動して、『何回目の来場でユニフォームを購入したのか』というデータはわれわれも持っていないものでした。素直に驚きましたし、今後そういったデータに注目してもいいのかなと思いましたね。

(学生に向けたメッセージ)データを分析することは大事ですし、基礎として必要だと思います。ただ、データだけを見るのではなく、お客様の心理などを理解したうえでの施策になると思うので、データ分析から仮説を立てて、それをしっかりと検証するような流れは社会人になっても通用するやり方だと思います。それを学生のうちにできることはうらやましいですし、今後にも必ず活きると思うので頑張ってください」

渡辺啓太JSAA代表理事

「学生の熱量、発想力はこういった機会がないと分からないことですし、あらためてこういう機会を作ることの大切さをJSAAとして感じました。

(審査のポイントは)今回は客観的なデータを与えられただけではなく、フィールドワークで生のお客さんに触れる機会があったことが特徴でした。そこをどう考え、最終的な施策に活かせたのかが一番のポイントでした。データを使って机上の空論を語っていても、スポーツ界ではオンザピッチであれオフザピッチであれ提言を受け入れてもらって実現するのは難しい世界ですからね。客観的なものだけではなく、フィールドワークで、生の声を聞いて感じた主観も含めてどういう施策を考えるのか。そこが興味深かったです。

スポーツ界には様々な課題がある一方、スポーツで何かやりたい学生がいる。色々な人にご協力いただきながらアナチャレのような“場”を作ることができれば、自然とアナリストの育成はできると感じました。今後の展開としてはサッカークラブだけでもいろいろなタイプがあると思うので、横浜F・マリノスさんにも引き続きご支援いただきつつ、例えば地方都市であったり沖縄のような観光都市にあるクラブの集客施策なども考えていけると面白いと思っています」