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2019.4.3

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【SAJ2019レポート】ファンエンゲージメントを最大化するデジタル時代のオフライン戦略

プロスポーツ界ではこれまでの「勝てばお客さんが入る」という原理に頼るのではなく、スポーツに最新テクノロジーを掛け合わせ、ファンエンゲージメントを高める試みが取り入れられています。観客動員数、ファンクラブ会員数など見える数字が頭打ちに近づいた時にどんな施策を行えるのか。ファン側とどのように接点を作っていくのか、そしてオフライン側に起きた最新テクノロジーによってどう「ワクワク」させられるのかについて現状を振り返り、今後の可能性を探っていきます。

今回スピーカーとして登壇したのは湘南ベルマーレセールスユニットリーダーの加藤謙次郎氏。そして株式会社ヤクルト球団で営業企画を務めている片野翔太氏。モデレーターには株式会社日本HPでデジタルプレスビジネス本部マーケティングマネージャーの山田大策氏が務めました。

ファンエンゲージメントにおいてデジタルの可能性とは

ホームタウンエリアのデジタルの可能性を語る加藤氏

セッションは、両チームの紹介とともにファンエンゲージメントを高めていく上で現在行っている取り組みの中で、デジタルをどう捉えているのかについて触れるところから始まりました。

約200万人が在住する広いホームタウンエリアを誇る平塚区でのデジタルの可能性について、加藤氏は「効率性においてはもっと勝負していく必要があり、チャンスはありますが、人材を含めたリソースがどうか。その中で、デジタルで仕掛けていくことで最終的にはファンの人にワクワクしてもらえるエンゲージメントができるのではないか」と言います。

一方で片野氏は球団創設50周年を迎える東京ヤクルトスワローズ球団にとっては今後未来へのメッセージを作っていくためにデジタルをどう駆使していくかを詰めているところだと現状を説明。節目の年に過去を思い出してもらえるコンテンツを出すことで、これからの50年、100年と続く未来へのメッセージをファンに伝えていけるかに取り組んでいるそうです。

現状行っているファンエンゲージメントの実態とは

デジタルだけに頼らないファンエンゲージメントの必要性を語る片野氏

山田氏からは、「どんなファンエンゲージメントが現在は行われているのか」という質問が投げられかけました。

試合来場者数、そしてJリーグ2位の収容率を誇るベルマーレはソーシャルメディアを含めてさまざまな策を打っている現状を加藤氏は紹介してくれました。パートナーの数も湘南ベルマーレ調べではJリーグトップの661社。年額3万円から1つのコミュニティーに仲間入りできるよう門戸を広げることでパートナーとともに“湘南”というブランドを形成していこうという考えがあるそうです。今後はスタジアム以外でどのようなきっかけを作っていくのかというオフライン戦略が必要となってくるといいます。

そして5年前と比較するとファンクラブ会員数が約3.2倍となり、チケットの売り上げも前売りが90%となった東京ヤクルトスワローズはその要因に人間味溢れるコンテンツを交えたメルマガ、そしてホームゲームの3分の2で実施されている各種イベントを挙げます。

片野氏は「6連戦のうち1試合は来場してもらえるチャンスをデジタルによって作れると思うのですが、もう一度来てもらうためにはイベントと掛け合わせないと厳しい」とデジタルだけに頼らないファンエンゲージメントの必要性も伝えます。

ラストワンマイルの「ウェットな部分」で差をつける

「印刷」テクノロジーの可能性を語る株式会社日本HPの山田氏

両チームの取り組みに対して、VRなどの新たなテクノロジーを展開している株式会社日本HPがどういった掛け合わせで新しいイノベーションを起こしていけるのか。

その可能性を秘めるテクノロジーとして焦点を合わせるのが「印刷」です。版画を通さずデータから直接印刷機に送ることができ、オンラインとオフラインが流動的につながるようになったイノベーションです。イベント興行としては共通性の高い音楽業界の取り組みを始め、海外の事例を紹介してくれました。山田氏は「デジタルでさまざまな施策を行った後、さらなるワンピースとなるオフラインの事象をスポーツ界は知らない人が多いのではないでしょうか」とまだまだ掛け合わせの可能性がある事を感じさせます。

印刷技術を活用したペットボトルを紹介

加藤氏は「技術は当然を変える」ことができるといいます。これまでの当たり前だったチラシ配りにデジタルを駆使することでよりメッセージ性のある内容にできるといいます。営業日が限られているサッカーの興行では接触ポイントを増やすために自動販売機の存在が大きいことも明かします。その自動販売機が人通りに関するデータや数値を出すことができれば、パートナーに対しても広告という新たな魅力を加えることができると話します。

片野氏は「ファンエンゲージメントを語る上で欠かせないのがファンクラブの存在」と語ります。6万人近くいる会員へ届く配送物のパッケージが現状ではワクワクを提供できていないと課題を挙げます。ファンクラブに属することで会員ランクや属性はすでにデータがあるので応援する選手のデータなども得ることが実現すれば、箱までもカスタマイズして、ファンにとっては捨てにくいグッズへと変貌させることが可能となります。「データの技術さえ使いこなすことができれば、郵送体験を変えることができる」とその可能性について話します。

技術を加えることで商品もターゲティングを行える広告に変えることができます。今後進化し続けるテクノロジーによってファンエンゲージメントはより個人に合わせた仕掛けができるという可能性について考えさせられるセッションでした。

(レポート:新川諒)