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2019.5.8

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【SAJ2019レポート】Goal-Driven Training ~選手育成の環境提供~

近年、AIの活用が急速に広まっていますが、スポーツ界でもAIの活用が進んでいます。NTTコムウェアは、LIGHTz株式会社とともにAI技術を活用し、サッカーのインテリジェンス面でのトップ選手の知識を可視化し、育成世代へ展開しています。

このセションでは「Goal-Driven Training ~選手育成の環境提供~」と題し、NTTコムウェア株式会社 ビジネスインキュベーション本部ビジネスインキュベーション部 担当課長の中里英則氏と、株式会社LIGHTz 代表取締役社長の乙部信吾氏が登壇。2社の実践型サービス開発を紹介しました。

講演の動画はNOTEで販売中です。

NTTコムウェアのスポーツビジネスの取り組み

NTTコムウェアの取り組みを紹介する中里氏(左)

NTTコムウェアは近年、スポーツを「する・みる・支える」の各領域のデータを活用するサービスを展開しています。選手がどれだけのパフォーマンスを発揮できているのか、観客がどれだけ声援を送っているのか、などを「スポーツビッグデータ」と呼び、スポーツ界で「育成・教育」「ヘルスケア」「観戦・体験」に寄与することを考えています。

直近で特に力を入れているのが「育成」。これまでは先輩やコーチの経験を元に抽象的で曖昧な指導が行われてきましたが、ICTを用いてより具体的な指導ができるようになることを目指しています。

現在、Jリーグのあるユースクラブで検証を続けているそうです。トラッキングデータを用いて「(データを)見る」→「(課題に)気付く」→「(改善策を)考える」→「(プレーを)変える」というサイクルを繰り返すことで、選手の興味・関心が高くなり、適切な目標を示すことで選手自ら考えるきっかけになっていると中里氏は語ります。

しかし、ここまでの取り組みは選手の「フィジカル」を強化するトレーニングが中心。もうひとつ重要な選手の「インテリジェンス」をどうトレーニングするのか。そこにLIGHTzとともにAI技術を活用しています。

LIGHTzのAIで可視化できたもの

デモ画面を見せながら解説

LIGHTzは現在、サッカー、バレーボール、フェンシングの3種目で「スポーツ×AI」の研究を進めています。乙部氏はまず、独自に開発したORGENIUS(オルジニアス)というAIの機能を紹介。サッカーのトラッキングデータを用いて、サッカーの「連動性(全体の流れ)」をどう分析するかに取り組んでいることを説明しました。

講演では、実際にLIGHTzのツールにNTTコムウェアのトラッキングデータを入れたデモンストレーション画面が公開されました。デモ画面を見せながら、ゴール前の局面で形成された「スペース/ルート」分析と、インターセプト成功に至る「ボール奪取」能力をスコア化できるようになることを明かしました。こうした取り組みにより、これまでデータで表すことが難しかったものを数値化できるようになり、選手の「インテリジェンス」面のトレーニングに役立てることができるようになりました。

乙部氏は2年間ほどトラッキングデータと向き合い、研究を進めてきた中で、NTTコムウェアのデータは精度が高いことと、さらなる精度向上を期待していることを語りました。

「スポーツ×AI」の価値とは?

今後、アマチュアレベルまでテクノロジーを提供することを目指していく

乙部氏はサッカーにAIを持ち込むことで、これまで分析が難しかった、そして最も大事な要素の1つである「連動」が分析できるようになると考えています。中里氏もこれに賛同し、選手個別の動きだけではなく、チームプレーも分析できるようになることが重要になるとの見解を示しました。

さらに、乙部氏はテクノロジストの醍醐味(だいごみ)は「『裾野』が拡がること」と語りました。現状はJ1などトップレベルにしかサービスを提供できていませんが、アマチュアレベルでもテクノロジーを提供できるようサービスを拡大していくことが重要と語りました。中里氏も「テクノロジーの醍醐味はいかに安く、広く拡げることができるか。そこを今後のビジネスにしていきたい」と語って講演を締めくくりました。