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2020.2.12

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【SAJ2020レポート】デジタル時代に向けた育成の変革~DXに取り組む現場の現状と課題~

中里氏(左)と本田氏がデジタル時代に向けた育成の変革を語った

スポーツにもデジタル化の波が押し寄せ、最新の技術やツールを使いこなすことが求められ始めており、育成現場にも多様な技術の導入が進められています。

このセッションでは、育成世代への「パフォーマンス・セルフアセスメント」を進めるNTTコムウェア株式会社 ビジネスインキュベーション本部 BI部 統括課長である中里英則氏、育成年代にテクノロジー導入を進め、多数のチームと選手育成を実践するSOLTILO Knows株式会社のGMである本田洋史氏が登壇し、NTTコムウェアの取り組みとDX(デジタルトランスフォーメーション)、また実際にテクノロジー導入を進めるSOLTILOの事例から、デジタル技術の導入にあたって、育成現場では何を求めていて、どんな課題があるのかを紹介しました。

DXの誕生に向けて

デジタル時代は「スポーツが変わるチャンス」だと中里氏は語る

現在、NTTコムウェアではスポーツを「見る・する・支える」という各領域のデータを活用した取り組みを進めています。中でも育成教育、ヘルスケア、観戦体験に力を注いでおり、今後は走行距離や加速度、移動距離などから構成されるスポーツビッグデータを活用し、年代別のパフォーマンスデータを算出することで同世代との比較や上位世代とのギャップ、目標の具体化といったリアルの世界と対応するデータの世界を作る取組みや、「フィジカルな世界での全国統一模試ができれば」と中里氏が説明しました。

そんな現状を中里氏はデジタル活用の段階であるとし、「デジタルがあるからこそ実現する」DXはまだ誕生していないのではと語ります。中里氏はDXについて、選手自らで学ぶことが増え、監督、コーチの役割が補助的になっていく、“教えるから学ぶスポーツへの変化”、VRなどの活用により、トッププロの動きを学ぶことで“身体能力から知能・判断力への変化”と自らの仮説を説明し、「デジタル時代でスポーツが変わるチャンス」であると述べました。

育成現場へのデジタル技術導入の現状

育成現場へのデジタル技術導入の現状と課題を語る本田氏

続いて本田氏から育成現場へのデジタル技術導入の現状について説明されました。SOLTILO Knowsでは、「スポーツをデータの力で変える」ことをミッションとして、「低価格での普及」「数値と根拠を打ち出す」「育成年代のけが予防」などを目指しています。

現在、心拍データとGPSデータを活用したデジタル技術をJリーグのユースや高校サッカー部に導入しており、本田圭佑選手の要望により、根性の数値化も行っています。

このウェアラブルセンターの導入価値は3点、オーバートレーニングの防止などの「コンディション管理」、負荷の可視化による「トレーニングの効率化」、自らの成長記録や比較による「自己分析」があると、本田氏は述べました。

一方、課題としては「適切なフィードバックができない」「使用するスタッフが足りない」「導入するための予算確保が難しい」の3点があり、最初に登場する課題としてはゼロから新たに捻出することになるため、「どうやって予算を確保するのか」という部分であるとしました。また「適切なフィードバックができない」という課題については、現在大きな問題となっていないものの、普及のためには必要ではないか。今後は分析ソフトなどを使っていくことも必要であると説明しました。

最後に本田氏は「NTTコムウェアなどの協力のもと、適切なフィードバックのできる未来を創っていく」、中里氏は「DXに繋がる世界を作っていければ」と話して、セッションを締めくくりました。

(レポート:山田遼)