News

2020.2.21

イベント

【SAJ2020レポート】HACK THE DECADE ~ミレニアル世代のレジェンドと考える日本スポーツ界の未来~

SAJ2020のテーマは「HACK THE DECADE」。その基調講演にはオリンピックで史上初の平泳ぎ2種目2連覇を達成した北島康介氏を招きました。JSAA理事の小倉大地雄氏がナビゲーターを務め、トップアスリートとして、また経営者として様々な活動を行ってきた北島氏の約20年のキャリアを振り返りつつ、2020年以降の日本スポーツ界の未来について考えました。

「チーム北島」や「プロ」など、環境が変わった2000年代

2000年代は選手のサポート環境が整い始めた時期だった

2000年代の北島氏を振り返ると、00年にシドニーオリンピックに高校生で出場して4位、04年のアテネ、08年の北京と100m・200m平泳ぎで金メダルを獲得と、選手として濃密な時間を過ごしました。その過程では平井伯昌コーチと2人3脚の体制から、国立スポーツ科学センターが設立され、複数の専門家がサポートする「チーム北島」ができたりと、金メダルを目指すための環境が整ってきた時期でもあります。北島氏は「非常に競技に専念しやすくなった。結果、責任感も大きくなった」とコメント。「選手にとってはありがたい環境。恵まれているし、分からない部分は託せる。競技能力が上げられるのは当然」と語りました。

また、05年に日本人初のプロスイマーになりました。高校生から「水泳で飯が食いたい」という思いを秘め、プロ野球選手をうらやましいと思っていたという北島氏は、「水泳選手をかっこいいなと思ってもらえたら嬉しい。格好良さは自分で打ち出していきたかった」と語っています。さらに、「競泳選手のプロは定義が難しい。競技をやってお金をもらえるのがプロ。ゴルフ、テニスのように大会で賞金があればプロが成り立つ。大会で賞金を獲得というのが世界中にあるモデルケース。選手にそれなりの対価を払っていくことが普及していくのではないか。(選手を)どう支えていくかは大きく変わっていくのでは」と展望を語りました。

「選手」と「経営者」がオーバーラップした2010年代

北島氏は選手でありながら会社を経営していた

2010年代の北島氏を振り返ると、16年リオデジャネイロオリンピック前まで現役を続け、09年には株式会社IMPRINTを設立し経営者にもなりました。現役選手でありながら会社を立ち上げた狙いについて、北島氏は「自分がどうありたいか。独立してその場を楽しむ環境を作った。自己を高めていく環境を作りたいと思い、マネジメント会社を作った」と説明。経営者になったことで「最終的な決断、思考力といった“自分で選んで考える力”がついた」といいます。

選手としての参加はかなわなかったものの、リオ大会を視察し、「水泳以外の様々な競技を見てオリンピックの偉大さを感じた。狭い世界で外のことを見てこなかった。他の競技から学べることもあった」という北島氏。今夏開催される東京大会について、「選手時代の興奮はないが、競技の魅力は伝えていきたい。1964年の東京オリンピックで(スポーツが)大きく変わったので、見つめ直して何かを変えていくきっかけになっていくのではないか」という見解を示しました。

2020年代、ISLは「革新的なものになっていく」

北島氏は国際水泳リーグへの期待を語った

話はこれからの10年についてへ。2019年にインターナショナルスイミングリーグ(ISL)が新設され、2020年から東京のチームが新たに参戦し、北島氏が代表を務めます。ISLについて、「昨年は世界で活躍した選手の75%が参加。男女平等で行うという水泳の良さが発信できる」と魅力を説明。「決まったルールではなく、変わっていっても面白いだろうし、スポーツ界にとって革新的なものになっていく。多くの人に知ってもらって、新しい見方をしてもらえれば」と語りました。

最後に、話題は再び今夏のオリンピック・パラリンピックについて。北島氏は「選手たちが活躍できる環境になればいい。サポート体制を厚くできるだろうし、外から受け入れる文化もあると思う。そういう環境を僕らが作るべきだと思う」と語って終了。スポーツ界のこれからの10年を考えるにあたり、ヒントが数多く含まれた講演となりました。

講演のグラフィックレコーディング

(C)インフォバーン グラフィックレコーディング部