News

2020.2.26

イベント

【SAJ2020レポート】Olympic Channelの東京2020大会に向けたファン獲得戦略 ~オリンピックムーブメントを推進するデジタルエコシステム~

トップアスリートがしのぎを削る世界最高の舞台、オリンピック。その4年に一度の舞台に向けて日々準備を進めるアスリートの舞台裏や競技の魅力を伝える『Olympic Channel』は、この夏、設立後初の夏季オリンピックを迎えます。

このセッションでは、『Olympic Channel』の編集長を務めるMary Byrne氏に、『Olympic Channel』のミッションやファン獲得に向けたアプローチ、東京2020大会に向けた様々な取り組みについて語っていただきました。

『Olympic Channel』のミッション

『Olympic Channel』の目的は大会期間以外にもストーリーを伝えること

初めにByrne氏は、『Olympic Channel』の概要およびミッション、そして目指すゴールについて語り、「今回のSAJのテーマであるHack the Decadeと同様に、『Olympic Channel』はどのようなイノベーションが生み出せるのか、次の10年、そしてその先に向けて何ができるかに注力している。」と述べました。また、「私たちのミッションおよびゴールは、大会期間中だけではなく日々、スポーツ、そしてアスリートのストーリーを伝えることであり、アスリートの東京2020大会に至るまでの過程を、大会前から大会終了後に至るまで伝えていく。それこそが『Olympic Channel』が伝えるストーリーである。」とも述べています。

また、各マーケットのファンを熟知するローカルパートナーの重要性についてもByrne氏は言及し、日本のケースでは、大会2年前からローカライゼーションを始めて以来、放映権者およびローカルプロバイダーの協力により、日本のファンに訴求するコンテンツの提供が可能になったと述べています。

続けて、アスリートが日々自身の限界を超えていくように、『Olympic Channel』もイノベーションを重視し、常に何ができるのか、可能性を追究しているとByrne氏は言います。そして、「東京2020大会では、IOCや東京2020組織委員会の仲間たちと“One Team”になり、データを駆使して史上最高のコンテンツを提供したい。アスリート、そして東京の最高のストーリーを発信し、ファンのエンゲージメントを高めていく。東京だけではなく、全世界に発信したい。」と意気込みを語りました。

コンテンツ提供の基準となるファンの理解

『Olympic Channel』が目指すこの野心的な取り組みにおいて、「全ての始まりはアナリティクス、ファンの理解である」とByrne氏はコメントしています。

特にオリンピックには数多くの競技があり、また、全ての国が参加するため、様々なテストを行い、ファンをエンゲージする良いアナリティクスの機会になります。

ファンを知るために重要なのはデータ収集ですが、特に昨今はデータの取得が難しくなっており、「ファンとの信頼関係を築くことが大切になる」とByrne氏は言います。

Byrne氏は続けて、「ファンがとった行動そのものよりも、なぜそのような行動をとったか、その理由を理解することが鍵になる」とコメント。例えば、「オリンピックの場合には、国や出身地などをきっかけに興味を持ちますが、その他にも、自身が昔行っていたスポーツや好きな有名人、イノベーションやサステナビリティ、そして開催都市の東京など、ファンが興味を持つきっかけを理解することが重要です」と述べています。さらには、「大会時に興味を持ったファンをどうつなぎ止めるかが大きなチャンレンジになる」ともコメントし、ファンとなる要素を理解し、行動を理解するこの試みは、まさに「ファンDNA」を作り出す試みであるとByrne氏は語ります。

そして、「ただデータを眺めるだけの受身な分析に意味はなく、最も重要な点は、データを読み解き、人々の経験をより良い方向に変えていくためにコンテンツを提供すること。」と強調し、1月にスイス・ローザンヌで開催されたユースオリンピックにおいて、リアルタイムで実験を行い、ファンの行動を観察することで提供するコンテンツを変えていた事例を紹介し、東京2020大会でも同様の取り組みを行うことをコメントしています。

東京2020大会に向けた取り組み

Byrne氏は東京2020大会に向けた取り組みを紹介した

セッションの最後にByrne氏は、東京2020大会に向けた数々の取り組みを紹介しました。

『Olympic Channel』の注力分野の一つである、海外オーディエンスのエンゲージメント強化について、「東京にいるファンだけではなく、世界のどこにいても東京、そして東京2020大会を近くに感じる取り組みを行う」とコメントし、さらにそれは、「人それぞれ異なったものになる」とも述べ、Olympic Agoraの取り組みや、ローザンヌユースオリンピックで実施されたOlympic Channel Live Showの取り組みについて言及しました。

また、Byrne氏は東京2020大会に向けて制作される様々な番組について紹介し、2016年のリオデジャネイロ大会の射撃金メダリストのNiccolo Campriani氏が、全くの競技未経験者である難民の若者に射撃の指導を行い、東京2020大会を目指す「Taking Refuge」というシリーズや、中国、ロシア、アメリカの3人の女子体操選手に密着し、彼女ら自身もソーシャルメディアを通じて発信を行うなど、ユニークな形で彼女らの東京2020大会へのジャーニーに迫った「All Around」というシリーズについて、映像を用いて紹介しました。

そして最後に改めて、「東京2020組織委員会の仲間たちとも協力し、これから大会後に至るまで、最高のコンテンツをお届けしたい」と、この夏に向けての意気込みを語ってプレゼンテーションを終了。間近に迫った東京2020大会に向けて、『Olympic Channel』の取り組みにますます期待が高まるセッションとなりました。

講演のグラフィックレコーディング

(C)インフォバーン グラフィックレコーディング部

(レポート:佐藤潤一)