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2014.10.26

コラム

第5回スポーツアナリスト種目間勉強会レポート 1/2

日本スポーツアナリスト協会では、競技種目の枠を取り払い、スポーツ界におけるアナリストの連携強化、情報共有、スキルアップを『共創』する場として、勉強会を定例で開催しています。
 
10月15日、味の素ナショナルトレーニングセンターで行われた5回目の勉強会では、現役アナリストを中心とした37名の方々にご参加頂きました。今までテーマにしていなかったラグビー、サッカーという「フィールド系競技」に焦点を当て、ラグビー日本代表分析担当としてご活躍中の中島正太氏、そして、サッカーのアナリストのパイオニア的存在である森本美行氏にご講演頂きました。
 
このブログでは、それぞれのご講演について2回に分けてご報告します。
まずは、中島氏の講演についてのレポートです。

講演テーマ:パスとキックで世界に挑むために

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2015年のワールドカップに向けて、『世界一のアタッキングラグビー』を目標として掲げる日本代表チームのアナリストの仕事は情報収集から始まります。アナリストとしての仕事の8割は映像の収集と管理であるとし、年間約1,580試合もの国内外の映像を収集、管理をするという膨大かつ手間のかかる作業が前提としてあります。そこからチームの要望に沿った分析が行われていくことになります。

日本と世界との比較より、『現在地』を確認する

週1度のコーチ陣とのミーティングでは映像や試合のスタッツだけではなく、GPSによる移動距離などを参考にして国内と国外試合の比較検討が行われています。例えば、GPSデータを分析してみると、日本のトップリーグでは1分間に約60mの距離を移動しているのに対し、国外試合では約85m移動していることが判明しました。このまま日本の選手が国外試合でプレーすると、そのプレースピードの違いに大きな戸惑いを感じることになります。ミーティングの中でこれらのデータの比較検討を行うことで日本の『現在地』を確認し、対策を練ることで、国外試合の準備を行えるという訳です。
 
対戦相手や日本チームの分析はとても詳細なもので、一つ一つのプレーにいつ、どこで、どのようなプレーが行われているのか、といったよう情報を記録しています。更に、天候や風向き、ピッチの状態、レフェリーの情報まで調べあげており、勝負を左右し得る要員を逃さない、徹底した追求が行われています。

パスとキックの最適な比率。日本らしさの体現を

ラグビーは相手陣地に深く侵入すればするほど、得点のチャンスが広がるスポーツです。ですので、パスの『出し手』より後ろにいる『受け手』にボールを渡さなければいけないルールの中では、相手に奪われないようにパスを多く回して前進するより、相手にボールを渡しても大きなキックで一気に相手陣地深くにボールを運ぶ方が効率が良いとされています。キック主体のチームは、相手に渡したボールにいち早く近づき、キャッチした相手選手を捕まえ、倒し、ボールを奪い返すことのできる強靭なフィジカル能力が必要です。一人あたりの体重差が10キロ以上違う上にスピードでも上回る国外選手を相手に、キック主体でフィジカル勝負に持ち込んでは対等に戦うのは容易ではありません。ボールをパスで細かく繋ぐポゼッションベースのラグビーに、効果的なキックを加えることで、勝利を引き寄せる。その調度良いを比率を見つけることも重要な仕事なのだそうです。
 
更に、このボゼッションベースのラグビーを可能にするためには、常に多くの攻撃オプションを実行可能にするため、多くの選手が効果的なポジショニングをとる必要があります。そこで求められるのは、倒されたり、自分のプレーが終了した後でもすぐ立ち上がり、効果的なポジションにいち早く入るといった献身的かつ頭脳的なプレーです。アナリストは、選手たちがそのことに練習中から常に意識できるように、試合や練習映像、データを駆使してコーチと連携を取りながら、選手に気づきを与えるという役割を担っています。

質疑応答:効果的なプレーとは?

講演中、選手の『効果的なプレー』や『効果的なポジション』についても測定している、との発言がありました。参加者から「効果的なプレーとは、誰がどのように判断し、『効果的』であるとしているのか?」というご質問がありました。

中島氏 「監督の判断によって、そのプレーが効果的であったかどうかを決定しています。例えば、ディフェンスで相手を倒した、つまり、相手を止めるということには成功したもののボールが奪えず相手にパスが繋がってしまったのであれば、それは『効果的ではないプレー』という判断になることがあります」

ゲームプランを決める監督が一定の判断基準を持っているからこそ、アナリストやコーチが『効果的』であるプレーについて共通理解を持つことができるとのことです。試合が無いときでも週に1度ミーティングを持ち、膨大な客観的データによるプレーの検証やお互いの意見をぶつけ合う話し合いによって、チームが目指すべきラグビーが明確になるということが伺えました。
 
2015年のワールドカップまで間近となっていますが、日本代表チームは11月にマオリ・オールブラックス(マオリ族のみの代表チーム)との試合を控えています。今回のご講演でぐっとラグビーの面白さを知ることができ、中島氏が支える日本代表の『パスとキックで世界に挑む』姿を是非応援していきたいと思います!
 
次回、森本美行氏の講演内容についてレポートします!