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2018.3.8

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【SAJ2017レポート】野球のデータ革命がもたらすもの 〜選手がホントに活用するデータとは?〜

メジャーリーグや日本のプロ野球界では、テクノロジーの発達により、様々なデータを収集、分析可能になっています。データを有効に活用するためにも、選手には情報を取捨選択する力が求められており、データを扱うアナリストにとっても、選手やコーチと的確にコミュニケーションする力が重要となっています。果たしてプロ野球選手が本当に欲しい、本当に必要な情報とは何か。

今回、スピーカーとして登壇したのは小宮山悟 氏。千葉ロッテマリーンズ、ニューヨーク・メッツなどのチームで、精密なコントロールとデータを軸とした投球術を武器に活躍しました。

モデレーターは、NHK BS1「球辞苑」に出演している事でも知られてる、データスタジアム株式会社 ナレッジ開発チーム兼ベースボール事業部 アナリスト 金沢慧 氏が務めました。

STATCASTを現役時代の小宮山悟ならどう使いこなした?

セッションは、金沢氏の「STATCASTが提供する詳細なデータが小宮山さんの現役時代にあったならば、どのように活用していましたか?」という質問から始まりました。

小宮山氏は、ノーラン・ライアンの投手コーチだったトム・ハウスから「リリースポイントをどれだけキャッチャーの近くで離すことが出来るか」を教わり野球観を変えられたが、それはボールを離すまでの技術にすぎないといいます。

「STATCASTの魅力は、選手の能力を客観的な数値として測定してくれる点にあり、投球の面で言えばリリースポイントでボールが離れてから、何が起こっているかを明らかに出来る機能にある。STATCASTから出てきた数字を見て自分の現状を把握出来るようになるのであれば、もっと現役時代に活躍できたのではないか」と小宮山氏は笑いながら語りました。

ただ、STATCASTが集計したデータだけ見ても単なる数値でしかなく、実際のプレーに活かすのは簡単ではありません。金沢氏からは、「他の選手にはどう影響を与えそうでしょうか」とさらに疑問を投げかけられました。

「数字が好きで、理解が出来るひとは楽しいが、そうじゃない人は受けつけないかもしれない」と小宮山氏は語ります。

具体的な例として、小宮山氏が現役時代の2007年に彼自身の投げる球を計測した時、「垂直水平で投げてられている」と自身がイメージしていた回転軸と、データで示された結果が全く異なっていたそうです。

自身の経験を踏まえ、自分の投げる球がシュート回転しているというデータを見たとき「なぜ?どうしたら回転軸を直せるのだろうか?どうすれば綺麗なバックスピンがかかるのだろう?」と考えられる人が、よりSTATCASTの恩恵を受けられるはず、と小宮山氏は述べました。

メジャーリーガーはデータをどう活用しているのか

金沢氏からは、「メジャーリーグはデータ活用に対してどのような意識を持っているのか」という質問が投げかけられました。近年では、一定の球速以上のあるボールを、ある角度で打ち上げることにより、ホームランを増加させる戦略『フライボールレボリューション』を組織で導入したヒューストン・アストロズが、2017年のワールドシリーズ制覇を成し遂げました。

小宮山氏は、「データそのものの活用」という観点でおいては、自身がニューヨーク・メッツに在籍していた時代と比較すると、メジャーリーグよりも日本のデータの方が細かく活用することに関しては優れていたと語ります。だが、データの収集については、3Aや2Aの選手のデータもきちんと用意されているため、 急にマイナーリーグの選手と対戦するという局面でも、すぐさまデータを見られる環境にあったそうです。

「チームや監督単位で見ていくと、メジャーリーグでもデータ分析が出来る能力の高いアナリストを重宝がる時代になるはずだ」と小宮山氏は語ります。

『フライボールレボリューション』はアストロズの本拠地であるミニッツ・メイド・パークが狭いからハマった戦略です。しかし「こういう形・角度で打てば長打を打てる」ということまでデータから導き出せる現状を踏まえると、大事なのは「データに従ってプレー出来る選手」であり、「出来ない選手は次々と淘汰されて行くかもしれない」と語りました。

現代の野球選手に求められる能力

STATCASTの台頭が示すように、最新の技術を駆使することによってより精密なトラッキング・体組織などのあらゆるデータが収集出来るようになりました。それを踏まえて、「現代の野球選手にはどのような能力が求められているのか」という金沢氏の質問に対して、小宮山氏は、ここでも一貫して「データ・数値に対して興味を持てるかどうか」が重要であり、数字を見て「なるほど!」と理解できれば実践へ活用出来るはずで、コーチやアナリストは選手に理解させることが求められていると、語ります。

「未来の野球選手に対しては、子供時代にデータへ触れることが増えてくれば「なぜ」と興味が持てるようになるはずだろう」と展望を抱く小宮山氏。「少なくとも5年後までに、野球界でこうしたことが当たり前にならなきゃダメだ」と熱く語りました。

金沢氏からの最後の質問は「小宮山さんが今後見てみたいデータはなんでしょうか?」。

金沢氏の質問に対して、小宮山氏が関心を持つデータと答えたのは「守備力」。「逆シングルで華麗にボールを取ることが果たして守備として正しいのかどうか」といったことはランキングに並べられないのでは、といった持論を述べました。

現役時代から投球とプレーの分析に情熱を注いできた、小宮山氏からの貴重な意見と未来のデータ活用について考えさせられるセッションとなりました。

(レポート:石橋和也)