Pick Up Analyst

2018.6.28

「スポーツアナリスト」という”仕事”に興味があった

第一線で活躍しているスポーツアナリストに対して、10の質問で自らの仕事への思いや考えを語ってもらう連載企画、『Pick Up Analyst』。第16回は、フェンシング・男子エペ日本代表アナリスト(株式会社LIGHTz所属)の太田奈々海氏に聞きました。

太田氏は、日本スポーツアナリスト協会が主催した、SAJ2015、SAJ2016で行われた、学生によるデータ分析&施策提案のコンペティション「スポーツアナリティクス甲子園」に参加。SAJ2017では「スポーツアナリティクス甲子園」の司会を担当されました。

選手がデータを欲しいタイミングまで待つ

現在の仕事を始めたきっかけを教えてください。

大学3年生の頃、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で「スポーツのデータサイエンス」の授業に触れたのがきっかけです。

実は大学まで、クラシックバレエをやっていました。私が所属していたカンパニーには専属のトレーナーがいて、怪我からの復帰をサポートしてくれたので、恵まれていたと思いますが、バレエは厳しい世界で、怪我をするとカンパニーから切られてしまうこともあります。”この怪我→切られる”という現実をどうにかしたいという思いが私の研究の根底にありました。

大学で環境情報学部に所属していたこともあり、クラシックバレエに取り組んだ経験と大学で学んでいることを活かして、「データで選手の体調を管理して、コーチとの間に立つ仕事が出来ないか」と次第に考えるようになりました。

そんな頃、「スポーツのデータサイエンス」という授業のゲストスピーカーとして、JSAA代表理事の渡辺(啓太)さんや理事の千葉(洋平)さんの話を聞いたとき、「私がやりたい仕事をやっている人がいる」と思いました。

授業が終わった後、千葉さんに「何でもいいからお手伝いさせてください」と伝えたところ、リオデジャネイロ・オリンピックまで、千葉さんが担当しているフェンシング・男子フルーレ日本代表の分析をお手伝いさせて頂く機会を得ました。

リオデジャネイロ・オリンピックが終わった後に一般企業に就職したのですが、就職後に「これでよいのか」という疑問を抱くようになりました。そこで、以前から相談に乗って頂いた、株式会社LIGHTz社長の乙部(信吾)さんや千葉さんに相談したところ、関係者に掛け合ってくださり、2017年7月から株式会社LIGHTzに所属し、同年9月からフェンシング・エペ男子日本代表のアナリストとして活動することになりました。

 

アナリストとして一番やりがいを感じる瞬間は?

選手・コーチが欲しがっているデータを提供して、データを実戦で活用してくれた時です。

私はデータを提供するタイミングは、選手自らが「データが欲しい」と感じるタイミングまで待つようにしています。

アナリストとして活動し始めた頃、すぐ選手にデータを提供しても、拒否反応が出るだろうと思っていたので、「データが欲しい」と言われるまで、提供しませんでした。

アナリストとして活動を始めて2ヶ月ほど経った頃、選手から「最近大会で勝てなくなったけど、どうしたらいい?」と相談されたときに、初めてデータを提供しました。

その後は、選手も積極的に相談してくれるようになり、データを用いたコミュニケーションがスムーズに行われるようになりました。

これまでのアナリストの仕事で、一番大変だったことは?

千葉さんが結果を出しているため、「(千葉さんと)同じことをしてくれるのではないか?」と思われている気がするので、「東京オリンピックまでの3年で、千葉さんが10年かけて出来たことに追いつかなければ」というプレッシャーを感じています。

選手とは年代が近いので、信頼関係を築くのに時間はかかりませんでしたが、コーチとの信頼関係を築くのは大変でした。ただ、幸いコーチがデータに興味がある人だったので、時間が経つにつれて、「試合がどう進んだのか分かるデータはないか」といった要望をぶつけてくれるようになりました。

 

スポーツの分析に欠かせない情報やツールは?

試合の映像とSportsCodeです。SportsCodeには、選手が立つポジション、時間、技の名前、剣の種類といったタグをつけ、試合の映像を分析しています。大会中は過去の試合映像とデータを基に対策を立てます。大会中に撮影した日本人選手の映像は、大会終了後のプレーの改善に活用しています。

試合前は、「相手の狙い」「焦りだすポイント」「調子が良いとき、悪いときのポイント」「プレースタイル」といった点を選手に伝えながら、選手とのディスカッションを通じて、選手が試合中に焦らないように心がけています。

これからはいかに分析やレポート作成を自動化し、フィードバックまでの時間を短縮することができるかが取り組むべき開発案件です。なので、弊社LIGHTzの技術を生かしてツールを開発すべく、現在努めています。

「チャンスの女神の前髪」を掴むまでアタックし続ける。

 

 

自身が考える「スポーツアナリスト」の定義は?

選手、監督、データの間に立つ「パイプ役」だと思います。

 

自分が他競技のアナリストをするとしたら、どんなスポーツか?

器械体操のアナリストをやってみたいです。富士通が3Dで審査をするシステムを開発し、動画から手動で計測する方法とは別の方法でデータが取れるようになったので、技の見極めなど指導に活かせるのではないかと思っています。

ただ、私は「スポーツアナリスト」という仕事に興味があったので、特定の競技のアナリストをしたかったわけではありません。もしかしたら、競技はどれでも良かったのかもしれません。

 

現在の仕事に就いてなければ、何をしていた?

エンジニアになっていたか、大学院に戻って研究をしていたかもしれません。

 

今後の目標、夢は何ですか?

自分が担当している選手が東京オリンピックに出場し、獲りたい成績を獲れるようにサポートするのが目標です。2020年以降のことはあまり考えていませんが、アナリストを続けても良いと思うし、大学院に戻って研究を続けてみようかと考えることもあります。

(公社)日本フェンシング協会・Augusto Bizzi/FIE

どんな人がアナリストに向いている?アナリストに必要な資質は?

決して華やかな仕事ではないので、地道に何かを積み重ねることが出来る人、が向いていると思います。大会期間中、朝から夜遅くまで試合を撮影し、選手をサポートし続けるのは簡単ではありません。

問題を発見出来る人は、スポーツアナリストに向いていると思います。選手から相談を受けた時に、問題に気がついていなければ、選手に意見を伝えることは出来ません。

問題を発見するスキルは、大学時代に身についたと思います。大学の授業はグループワークが多く、ディスカッションや、プレゼンテーションを通じて、常に自分の考えを相手に伝えなければなりませんでした。プレゼンした内容の筋が通ってなければ、教授に突き返えされることもありましたので、自分の考えを相手に伝えるために試行錯誤した大学時代の経験が、今に活きていると思っています。

どうしたらスポーツアナリストになれるのか?

人の縁は大切です。アナリストになりたいと思ったら、アナリストとして活動している人に、話を聞くべきだと思います。そして、話を聞く機会が得られたら、「何か手伝わせて欲しい」とアピールし、やる気をみせてアタックすることが大切だと思います。

私は「チャンスの女神の前髪」を掴もうと、必死でアタックし続けました。受け身の人には、なれない仕事だと思います。

(インタビュアー:西原雄一)

アナリストプロフィール

アナリスト

太田奈々海 氏

株式会社LIGHTz Sports×AI section

慶應義塾大学 環境情報学部 卒業 在学中 スポーツアナリティクス甲子園2015でSAP賞を受賞 現在 株式会社LIGHTz Sports×AI sectionに所属。日本オリンピック委員会強化スタッフ(情報・戦略スタッフ)としてフェンシング 男子エペ日本代表のスポーツアナリストとして活動

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