Pick Up Analyst

2018.10.1

今の自分があるのは、先輩アナリストのおかげ

第一線で活躍しているスポーツアナリストに対して、10の質問で自らの仕事への思いや考えを語ってもらう連載企画、『Pick Up Analyst』。第18回はBリーグ・千葉ジェッツふなばし(以下、千葉ジェッツ)でビデオアナリストを務める木村和希氏に聞きました。

分析のフレームワークを作るのが大変だった

ー現在の仕事を始めたきっかけを教えてください。

本格的にアナリストとして活動し始めたのは、大学2年生からです。

元々は福岡の大学のチームのスタッフとして活動していたのですが、「関東の大学に勝ちたい」というチームの目標に対して、自分が何か貢献できないか調べていたら、鹿屋体育大学の森重さん(現琉球ゴールデンキングスAC)が、SPORTSCODE(スポーツコード)を活用して相手チームを分析し、関東の大学に勝ったという先行事例があることを知り、自分も同じことができないかと考え、分析をはじめました。

分析を始めた頃に影響を受けたのは、バスケットボール日本代表のテクニカルスタッフだった末広(朋也)さんです。

ある時、末広さんが講師を務めるセミナーに参加したのですが、参加するまでは、ビデオ撮影はしているけれど、体系的にデータを取得・分析したり、データを編集して伝えていませんでした。末広さんのセミナーに参加後、バスケットボールの分析について、より深く考えるようになりました。

大学4年生の時に、Bリーグのライジングゼファー福岡でインターンをやりました。インターン時代には、ピックアンドロールといった、攻撃の戦術パターンのデータを取得することだけでなく、「データをいかに見せるか」を学びました。

当時のライジングゼファー福岡では、アメリカの大学に留学し帰国したばかりの浜中コーチから、データの見せ方や伝え方の工夫を学びました.具体的には1週間の中での伝達のスケジュールや見せる映像の順番などを学びました。

バスケットボールの分析を始めてから、毎年SAJ(スポーツ・アナリティクス・ジャパン。JSAAが毎年開催しているカンファレンス)に参加するようになりました。SAJに参加して、データを収集することが重視されていたアナリストの仕事が、今後はデータを分析することが重視されると考えました。そこで、もっと分析の知識を深めたいと考え、大学院に進みました。

大学院では、スポーツ統計学(測定評価領域)を通じて、平均、中央値、最頻値などの統計の基礎となる記述統計の分野から、統計学の多変量解析(複数の結果変数からなる多変量データを統計的に扱う手法)といった分析手法や指標について学びました。

Bリーグのチームとは、大学院時代のコーチの紹介や、練習試合を行ったチームのコーチを通じて、コネクションを築いていました。いくつかのチームと話をさせて頂いた後、2018年2月からの合流を許してくれた千葉ジェッツに加入しました。

 

ーアナリストとして一番やりがいを感じる瞬間は?

自分が納得できる準備をした上で、試合に勝つ喜びを味わえた時です。納得できるだけの準備ができなくても、試合に勝てることはありますが、できるだけ納得できる準備をしようと心がけています。

 

ーこれまでのアナリストの仕事で、一番大変だったことは?

分析のフレームワークを、ゼロから作るのが大変でした。

大学院で統計を学び、分析にはフレームワークが大切だと気がつきました。同じデータを使って同じ分析した時に、毎回同じ結果が出るような分析の再現性がないと、提供するデータに対して、選手やコーチからの信頼を失ってしまうと思います。

再現性がある分析するためには、基準となるフレームワークがなければ分析できません。ゼロからフレームワークを作るのは大変でした。

フレームワークを作るにあたっては、コーチ陣とも話しあいますし、コーチ陣がミーティングや実際の試合でで話した内容も参考にしています。

 

ースポーツの分析に欠かせない情報やツールは?

データは映像データと、スタッツデータの2種類があります。

映像データの分析ですが、大学時代はSPORTSCODE GAMEBREAKER PLUSを使っていました。千葉ジェッツに加入した2017-18シーズンは、SPORTSCODE ELITE REVIEWを使っていました。今シーズンからは、SPORTSCODE ELITEを使用し、動画共有用にHudl(ハドル)、リアルタイムデータ取得用にSPORTSTEC CODA(コーダ)を使っています。

SPORTSCODEでデータを取得するときに使うタグは、フレームワークを見直すたびにアップデートしています。

2017-18シーズンは、シーズン途中からの合流だったため相手の分析をメインにやっていましたが、2018-19シーズンはプレシーズンから一緒に取り組んでいるので、シーズン終盤には、取得するコードや提供するデータの種類も変わっているかもしれません。

スタッツデータの分析には、Microsoft ExcelのVBAや統計ソフトのRを使っています。スタッツデータは主にSynergyから取得しています。Bリーグのチームと個人のスタッツを集計して、VBAでスクレイピング(Webサイトから情報を抽出すること)していますし、オフシーズンに行ったシーズン通したスタッツの分析は、Rを使いました。

スポーツアナリストは「情報分析を専門とするスタッフ」

ー自身が考える「スポーツアナリスト」の定義は?

情報分析を専門とするスタッフだと思っています。

チームスタッフとは、何か専門性が必要な職業だと思います。通訳なら言語、トレーナーなら身体のメンテナンスなど、スタッフにはチームで一番と言えるスキルが、誰にでもあります。僕はアナリストとして、情報分析の分野でチームで一番にならなくてはと考えています。

また、「アナリストが分析すれば何でも分かる」と考えている人もいますが、アナリストもチームスタッフの一人なので、魔法使いではありません。

アナリストの専門の分野は分析です。分析を通じて、選手とコーチとのコミュニケーションを円滑にする役割を担いたいと考えています。

 

ー自分が他競技のアナリストをするとしたら、どんなスポーツか?

同じゴール型の競技、できればラグビーがいいですね。ラグビーは分析に対する理解もあるし、土壌がしっかりしていると感じています。

ゴール型競技を構成する、「時間」「エリア」「人」「行動」といった因子が変わることによって、収集できるデータや分析結果がどう変わるのか知りたいです。

 

ー現在の仕事に就いてなければ、何をしていた?

僕の場合、既に「スポーツアナリスト」という職業で活躍している人がいました。したがって、アナリストになるために行動し、実際にアナリストになることができました。アナリストという職業をゼロから作り上げてくれた、先輩アナリストには感謝しかありません。

僕は「アナリストになろう」と思って行動したので、アナリストにならなかったらという想像自体できません。

目標は「日本一のアナリストになること」

ー今後の目標、夢は何ですか?

目標は「日本一のアナリストになること」です。

チームの目標は日本一です。千葉ジェッツのスタッフは、コーチ陣、マネージャー、通訳、トレーナーなどが、それぞれの分野で日本一の水準で仕事をしていると思うので、自分もこの分野で日本一にならなくてはと思っています。

また、今の自分があるのは、先輩方のおかげだと思っています。夢としては僕は次の世代に、スポーツアナリティクスをカルチャーとして、当たり前のように活用されるように浸透させたいと考えています。

 

ーどんな人がアナリストに向いている?アナリストに必要な資質は?

探究心があって、主体性があって、対応力がある人だと思います。分析データを取得するとしても、どんなデータを取得したいのか、取得したデータをどう活用するのか、主体性をもって取り組まなければなりません。

また、コーチのニーズ、選手のニーズは常に変化します。変化するニーズに柔軟に対応することもアナリストには求められます。

 

ーどうしたらスポーツアナリストになれるのか?

これからの人たちは、アナリストという職業がある時代なので、直接アナリストから「アナリストとは何か」を学ぶべきではないかと思います。

僕は、海外だとアナリストの数が多いので、トップのアナリストに話を聞くには手間もかかるはずなので、日本にいるほうがトップのアナリストに直接話が聞けると考えていました。

バスケットボールのアナリストを目指している人でも、バレーボールのアナリストの話を聞くのは参考になるはずです。先輩から学ぶこと、先輩から知ることで自分のスタイルを作っていくことが大切だと思います。

取材協力:千葉ジェッツふなばし有限会社フィットネスアポロ株式会社ドーム

(インタビュアー:西原雄一)

アナリストプロフィール

アナリスト

木村和希 氏

千葉ジェッツふなばし

日本経済大学在学中にバスケットボール部のアナリストとして活動を開始。福岡大学大学院スポーツ健康科学研究科を経て、2017-18シーズンからBリーグ・千葉ジェッツふなばしのビデオアナリストとして活動。目標は「日本一のアナリスト」。

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