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2019.1.3

イベント

小倉大地雄理事が語るSAJの魅力「イノベーションが生まれる熱気と躍動感のある場」に

日本スポーツアナリスト協会(JSAA)は2019年1月26日(土)にSAJ2019-スポーツアナリティクスジャパン2019-を開催します。SAJはJSAAの年次カンファレンスとして2014年に産声を上げ、SAJ2019で5回目を迎えます。そこで今回はJSAAの理事に過去4回を振り返りながらSAJの魅力を語ってもらいました。第3弾はJSAAの広報を務める小倉大地雄理事に話を聞きました。

スポーツ業界だけではなく、他業界の方々を巻き込む

―過去4回のSAJではどんな反響がありましたか?

SAJスタートのきっかけとして、スポーツアナリストの活躍の場を広げていくためにはスポーツ業界だけではなく、他業界の方々を巻き込んでいかなければいけないと考えていました。実際に現場のスポーツアナリストが始めたイベントにも関わらず、スポーツ界以外の方々からも大きな反響がありました。

スポーツ業界のビジネスカンファレンスはSAJがスタートした2014年当時はまだまだ多くはなかったんですけれどその後は増えてきています。2019年にはラグビーW杯があり2020年には東京五輪・パラリンピック、その後も国内で大きな国際大会が次々に開催されます。今まさに日本のスポーツゴールデンイヤーズが到来すると言われていますけれど、そこに向けてスポーツ業界がすごく盛り上がっているのは感じますよね。

一方で我々はJSAAを立ち上げた当初から2020年以降の日本スポーツ界の未来を考え、作っていかなければならないという使命感を持ってやっています。そこに向けて少しずつ手応えを得ながらこの4年間歩んで来れたのかなと思います。

SAJ2017展示ブースの様子。スポーツ界以外からも多くの参加者が集まる

―SAJを初めて開催した2014年からスポーツアナリティクス業界の変化は感じますか?

我々がJSAAを立ち上げた当初考えていたデータ分析の分野は「パフォーマンス向上」だけだったんですけれど、“スポーツアナリティクス”というバズワードを普及させることでその可能性は広がると考えました。

マーケティングなどビジネスの領域であったり、スポーツを報じる際にいかにデータを可視化するかというメディア領域も含まれていると思います。そういった意味でも多様なコミュニティから集まって下さる多くの方々が興味を持ち、何かを得ることができ、楽しんでいただけるようなコンテンツづくりを意識しています。

そういう中で参加して下さった一般のビジネスパーソンからもコンテンツに関しては評価をいただいていると感じていますし、毎年、JSAAは多くの企業や団体から賛助会員としてサポートしていただいています。そういうことからも業界への期待感というのは感じられますね。

また、今年はJSAAがパートナーシップを結んだ海外のカンファレンスが2つ日本で開催されました。オーストラリア発の「Japan Sports Analytics Conference (SAC Japan)」と、メキシコ発の「Sports Innovation Summit Tokyo(SiS)」です。この2つのカンファレンスに象徴されるように、これから数年、日本そして東京という都市が国際スポーツ業界でも注目を浴びることになります。

日本のゴールデンスポーツイヤーズというのが一過性のもので終わらないよう、スポーツアナリティクスの分野で日本を、東京を、アジアのスポーツキャピタルにしていくくらいの意気込みを持ってこの波をとらえることが重要だと思っています。

小倉理事の印象に残っているセッション

BAMTECHの事例を紹介した Inzerillo氏(右)と荒木氏

―小倉理事の印象に残っているセッションは?

一番印象に残っているのは、SAJ2017に登壇していただいたBAMTECH MediaのCTO、Joe Inzerillo氏による基調講演『THE GAME CHANGER ~トラッキングデータが起こしたスポーツの変革~』*と、続けて荒木重雄氏をナビゲーターに迎えた『米国メディア業界に起こる地殻変動 ~世界最大のスポーツ×ICT企業の正体~』*というセッションですね。

SAJ初となる海外からのゲストスピーカーということもあり、我々としても非常にチャレンジングなことではありましたが、MLBのSTATCASTであったりストリーミングサービスをゼロから育ててきたInzerillo氏が来てくれたというのは、日本のスポーツビジネス業界にとって意義のあることだったのではないかと思っています。MLBという1つのリーグが創ったメディアがディズニーに買収され、2018年にはESPN+、2019年にはDisney+というサービスを生み出し、世の中に大きなインパクトを与えるソリューションになりました。

スポーツというコンテンツを扱う事業が社会的にインパクトを与えるようになる。そんなゲームチェンジャーが日本でもSAJをきっかけに出てきてくれたら嬉しいですね。そういう意味でもInzerillo氏のセッションは印象深いです。

*2019年1月11日(金)までにSAJ2019の参加登録いただいた方は、ビデオアーカイブにてこちらのセッションをご視聴いただけます。

”スポーツアナリティクス”から離れたセッションも組み込む理由

SAJ2015でインフォグラフィックを用いたデータの可視化を語る櫻田氏

―毎年のセッションの作り方にはJSAA理事の思いや流れを感じます。

毎年、参加者の皆さんの知的好奇心を刺激するようなセッションをご用意できるよう数ヶ月かけて実行委員会で意見を出し合っています。

流れとしてSAJ2015からは“スポーツアナリティクス”から少し離れたセッションも組み込んでいます。SAJ2015でいうとNewsPicksのインフォグラフィックエディターである櫻田潤氏に登壇していただいた『データをいかに伝えるか? -インフォグラフィックの活用と創作プロセス』ですね。データを可視化するということはアナリストの技能としても貴重なものですし、アナリストを目指す人にとっても、一般のスポーツビジネスパーソンにも有益な話だったと思います。

SAJ2016では松葉氏(左)と齋藤氏(中央)に登壇していただき、スポーツコンテンツの可能性を広げるセッションを実施

データの可視化についてはSAJ2016でもRhizomatiksの齋藤精一氏とギズモード・ジャパン編集長(当時)の松葉信彦氏に登壇していただき『テクノロジーで拡がるスポーツの可視化』というセッションをやっています。

こちらも最先端のテクノロジーを駆使してスポーツの奥行きであったりデータを活用することでいかにファンのエンゲージメントを高めていくのかという議論をしてもらいました。“スポーツアナリスト”の話からは外れているんですけれど、新たなスポーツの楽しみ方であったり、スポーツコンテンツの可能性を広げていくような有意義なセッションだったと思います。

『テクノロジーがつくる近未来のスポーツ体験』などのように、「皆さんの想像の斜め上を行くようなコンテンツをご用意したい」と小倉理事は語る

そういう流れがあって、SAJ2017でも『テクノロジーがつくる近未来のスポーツ体験』*とうセッションをやりました。こちらもテクノロジーを駆使したファンエンゲージメントだったり、新しいスポーツ体験を今をときめく1→10の澤邊芳昭氏、Cerevo(当時)の岩佐琢磨氏、電通イノラボの森田浩史氏に議論してもらいました。

いわゆるスポーツアナリストの王道のコンテンツからは外れたものもSAJでは意識的に盛り込んでいます。今年も来場していただいた皆さんの想像の斜め上を行くようなコンテンツをご用意したいと思います。

「THE GAMECHANGER」というのはJSAAとして目指すべきひとつの姿勢として、普遍的なテーマ

「BEYOND2020」など、毎年設定されているSAJのメインテーマに込められた思いとは?

―SAJ2016は「BEYOND2020」、2017は「THE GAMECHANGER」、そして2019の「Innovation in Action」とテーマを設けています。こちらにはどんな思いが込められているのでしょうか?

SAJ2016はリオデジャネイロ五輪が終わった直後ということもあり、「いよいよ次は2020年の東京だ」という雰囲気が世の中にあったと思います。SAJは2020年以降のスポーツ界を見据えて立ち上げたイベントですので、「いよいよ次は」というタイミングでだからこそ、2020年をゴールにするのではなく、あえてこの時期にそれ以降のことを考えようと。SAJのキーワードでもある「尖(とが)る」ということを表現する1つの形として「BEYOND2020」をSAJ2016のテーマにしました。

SAJ2017の「THE GAMECHANGER」というのはJSAAとして目指すべきひとつの姿勢として、普遍的なテーマでもあります。スポーツアナリティクスはマニアックな領域だと思いますけれど、世の中的には様々な場面でデータが取れる環境が整ってきていると思います。一方でまだまだそのデータを活用するプレーヤーが足りていないというのも現状だと思います。そういう意味でも、新たなビジネスだったりコンテンツを生んでいく可能性を秘めた領域だと思います。この領域からスポーツ界のゲームチェンジャーであったり、世の中のゲームチェンジャーが必然的に生まれていくと思うので、このテーマを設定しました。

そして今回の「Innovation in Action」は昨年の「THE GAMECHANGER」を引き継いだイメージです。SAJ2019に集まってくださる1人1人がゲームチェンジャーになってもらいたい。この業界を一緒に変革してくれるような仲間になっていってほしいと思っています。

今年はさらにJSAAがスポーツ庁の推進する「スポーツオープンイノベーションプラットフォーム(SOIP)」の担い手になりました。そのイベントを併催することとなったSAJ2019は必然的に多くのゲームチェンジャーが集まる場になります。まさにこの現場でイノベーションが生まれる、そんな思いが今回のテーマには込められています。

小倉理事はSAJを「イノベーションが生まれる躍動感のある場にしていきたい」と抱負を語った

―SAJ2019と他のカンファレンスの一番の違いは?

SAJは日本発、しかも強化の現場最前線の人間が汗をかきながら立ち上げたイベントという意味ですごく特殊ですし、世界中を見渡してもなかなかないと思います。大きなビジョンを持ちつつ、いい意味で“手作り感”は残していきたいですし、イベントの端々にわれわれ主催者の思いというのが滲み出ていると思います。

主催者側も皆さんと一緒に成長していくと思うし、参加して下さる皆さんと共に創るイベントというのを大事にしていきたいと思っています。参加者の皆さんにも是非そんな醍醐味を感じながら参加してもらえたら嬉しいです。そして、皆さんと一緒に未来のスポーツ界を考えながら、イノベーションが生まれる熱気と躍動感のある場にしていきたいですね。

(インタビュアー:豊田真大/スポーツナビ)

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JSAAでは現役スポーツアナリストも多く集まる日本唯一のスポーツアナリティクスカンファレンス「SAJ2019」を2019年1月26日(土)に開催致します。ご興味ある方は是非こちらをチェック!